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女鑑~おんなかがみ~
第14章 被虐
昨日,花芯を若槻の口に含まれたときに感じた電流よりも,もっと重い衝撃が腰に響いた。
腰から背中全体が熱く溶けるように感じ,それまでは辛いと思っていた圧迫感は,形容しがたい甘やかな感覚になっている。そして,身体の奥深くが,若槻を離すまいとしていることがわかる。身体中がきゅんと締まる。
「ああ,このままでいて,ください」
葵は,夢中で手を伸ばして若槻の背中を抱いた。
若槻の掌がゆっくりと髪を撫でていたことに気づいた。心から幸せだと思った。
「ああ,嬉しい,ありがとう,ございます」言おうとする間にも,身体の奥がぴくんと震えて締まる。
「好き…」葵はもう一度手を伸ばそうとした。
しかし,若槻はその手を握り返そうとはせずに退け,さっきまで身体中を満たしていたものが一気に引き抜かれた。身体中に喪失感が広がる。
「客より先に気を遣るなんてのは,女郎の恥だぞ。浅ましい淫乱女め」
さっきとは別人のような冷たい声がした。
「え……ごめんなさい」
抜け殻になったような身体の奥が,名残りのようにぴくん,ぴくんと震えた。
「疲れただろ,君も,俺は帰るから。」
「え」
「え,じゃないだろ。習わなかったか。自分もさっと着物を着て,こっちの着物を着せて,帳場に・・だろ。ほんと,どうなってるんだか,この店は」
慌てて見送りの支度を整えようとするが,腰にも足にも力が入らない。
何とか自分の着物を整えて帳場についたときには,若槻はもう店を出た後だった。
***************
「ご苦労様,昨日の今日ではきつかったでしょ。ゆっくり休んでらっしゃい」
という千鳥に,
「ごめんなさい,千鳥ねえさん。私,若槻さんを怒らせてしまったかもしれません」
と葵は泣きじゃくった。
「よくわからないけれど,大丈夫じゃないかしら,帰り際に,着物でも誂えてやってくれって,別にかなりの大金を置いてくださったわ。
それから,こんな書付,タイガーの紹介だという客が来たら,葵に相手をさせろって,何かしらね,タイガーって」
「タイガー,英語でトラのことです。若槻輝虎さんのご紹介ということかと・・・・」
若槻さん……
初めて知る甘い感覚に浸りながら,ゆっくりと髪を撫でられていた掌の感覚が思い出され,再び身体の奥が,きゅんと震えた。
腰から背中全体が熱く溶けるように感じ,それまでは辛いと思っていた圧迫感は,形容しがたい甘やかな感覚になっている。そして,身体の奥深くが,若槻を離すまいとしていることがわかる。身体中がきゅんと締まる。
「ああ,このままでいて,ください」
葵は,夢中で手を伸ばして若槻の背中を抱いた。
若槻の掌がゆっくりと髪を撫でていたことに気づいた。心から幸せだと思った。
「ああ,嬉しい,ありがとう,ございます」言おうとする間にも,身体の奥がぴくんと震えて締まる。
「好き…」葵はもう一度手を伸ばそうとした。
しかし,若槻はその手を握り返そうとはせずに退け,さっきまで身体中を満たしていたものが一気に引き抜かれた。身体中に喪失感が広がる。
「客より先に気を遣るなんてのは,女郎の恥だぞ。浅ましい淫乱女め」
さっきとは別人のような冷たい声がした。
「え……ごめんなさい」
抜け殻になったような身体の奥が,名残りのようにぴくん,ぴくんと震えた。
「疲れただろ,君も,俺は帰るから。」
「え」
「え,じゃないだろ。習わなかったか。自分もさっと着物を着て,こっちの着物を着せて,帳場に・・だろ。ほんと,どうなってるんだか,この店は」
慌てて見送りの支度を整えようとするが,腰にも足にも力が入らない。
何とか自分の着物を整えて帳場についたときには,若槻はもう店を出た後だった。
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「ご苦労様,昨日の今日ではきつかったでしょ。ゆっくり休んでらっしゃい」
という千鳥に,
「ごめんなさい,千鳥ねえさん。私,若槻さんを怒らせてしまったかもしれません」
と葵は泣きじゃくった。
「よくわからないけれど,大丈夫じゃないかしら,帰り際に,着物でも誂えてやってくれって,別にかなりの大金を置いてくださったわ。
それから,こんな書付,タイガーの紹介だという客が来たら,葵に相手をさせろって,何かしらね,タイガーって」
「タイガー,英語でトラのことです。若槻輝虎さんのご紹介ということかと・・・・」
若槻さん……
初めて知る甘い感覚に浸りながら,ゆっくりと髪を撫でられていた掌の感覚が思い出され,再び身体の奥が,きゅんと震えた。