この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
佐伯は、しばらくして唐突に尋ねた。
「それより,君は,私の絵についてどう思いますか。」
「いつも,なんと素晴らしいのかと感嘆するばかりです。私は,学業はそこそこできるほうでしたが,絵についてはまったく才能がなく,図画と唱歌だけはいつも成績が悪かったもので,あのような絵をお描きになられるというのはただ,尊敬申し上げるばかりです」
「そうですか。それはありがとう。君のような秀才の優等生にも不得手なものがあるとは,少し安心いたしましたよ。
しかし,君は前に,私が描いて,机の上に広げていた花の絵を,驚いたようすでずっと見つめておられましたね。
君の視線があまりに怖くて,絵に穴が開くのではないかと思うほどでしたよ。
たしかツツジや百合や菖蒲の花の絵だったと思いますが。
あの様子を見て,何となく,君と話をしてみたくなったのですよ」

孝秀は数日前のことを思い出した。佐伯が描いていたのは,花の構造を縦断面で図解した絵だった。
普段は水彩絵の具を使う佐伯が,そのときは油絵具で描いていた。絵の具が乾ききらないキャンバスの上で,花のめしべがてらてらと光る様子が脳裏によみがえった。

「ああ,失礼をいたしました。
花はただ,可憐で美しいものだと思っていましたが,先生がお描きになったあの絵を,拝見したとき,なんといいますか。
その,少し,驚きと,それから,つまり,なんといいますか」
孝秀は,失礼のない言葉を選ぼうと苦心した。
「そんなに気を使わなくても構いませんよ。あの花の絵が,淫らであったので,嫌悪感を持たれたのでしょう。けれど,目を背けることもできず,まるでにらみつけるようにして,ずっと見つめておられた。お顔で分かりました」
佐伯は穏やかに微笑んだ。
「あ,失礼を,お許しください」
「やはり,図星でしたね。恥じることなどありません。あなたの見方は正しい。
花というものは,実は非常に淫らなものなのです。
咲いた場所から動くことも,来るものを拒むこともできず,そこで交わって子孫を残すことを求めるのですから。
そうは思いませんか」
「あ,ああ,そうですね。」孝秀は思わず赤面しそうになったことを恥じた。
佐伯は穏やかに微笑んで料理を口に運び,しばらくは静かに食事を続けた。
/185ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ