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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
「私は,その後,五助の誘いを受けるたびに,何カ所かの遊郭や貸座敷などで,絵を描くようになりました。
縛られた女の絵や様々な体位での交わりの絵。拙い絵であっても,驚くほどの値段で売れます。
まあ今後,もう少し写真が普及すれば需要はなくなると思いますが,写真機などを買おうと思えば給料一年分はかかりますから,絵の代金どころではありませんからね。
それは当初は当面の小遣い稼ぎのつもりでしたが,今は,この仕事が大きな楽しみになっています。先に申しましたように,私は幼いころの病で性的には不能ですが,どこかに行き場のない性欲が残っているようで,あのような絵を描くことでそれを満たしているのでしょうね。君は軽蔑するでしょうが。」
「いえ,まあ,先生よりももっと酷いことを女性に対してする男はたくさんいますから,先生だけを軽蔑するのではありませんよ。
けれど,描かれる側の女性は,もちろん,百合子様のような方もおられるでしょうが,嫌ではないのでしょうか。」
「それは人によります。長年,客を取り続けてきて沢山の男に身体を許すのは平気だけれど,絵を描かれるのは嫌だという女もいます。
なるべくそういうのは描かないで断るようにしていますが,抱え主がそれでも描いてくれと言えば描いたこともあります。恥じらっている姿というのも高く売れる絵ですのでね。逆に,描いてほしいと言い出す女もいます。

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