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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
そういえば,ついこの前,これも五助がある男に頼まれて行った小さな城下町の遊郭の小さな店でしたけれどね。
そこで縛って描いた女は素晴らしかったです。端正で控えめだが芯が強い。もともとは立派な家のお嬢さんらしくて,自分から身売りをして家を救ったんだと女将が熱心に褒めていましてね。
まだ客を取り始めて日が浅いということだったが,あれは本当に凄いと思いました。
私だけではなく,五助も,五助はこれまでにあちこちでいろいろな商売女を見てきているが,あんなのは初めて見たと言っていました。
まあ五助の奴はいろいろと調子に乗って,彼女に恥ずかしい体勢や苦しい体勢を長時間させたり,触ったり摘まんだりしていたのですが,あの娘,確か葵と言いましたが,彼女は一度も嫌がらずに素直で,それどころか声も立てなかった。何を命じられても「はい」ときちんと答えるだけです。
でもぼんやりとされるままになっているのではなくて,切なさも恥じらいも情欲もすべて目の色に滲み出てきます。色白な身体が薄紅に染まり,奥から蜜が零れだしてくるのです。
私も本気で抱きたいと思った。そこまで思ったのは初めてです。
沢山の絵を描き終えて,終わろうとしたとき,それまで「はい」としか言わなかったのが,どうか一度だけ入れてほしいと言い出しました。
交わっているところを描く予定は最初はなかったのですが,願ってもない話です。
五助と交わっているところをさらに何枚も描きましたが,あのときは本当は自分が,あの女を抱きたいと思いましたね。
五助も勧めてくれたのですが,さすがに絵師としての矜持が邪魔をして邪険に断りました。
それでも今も思い出しますよ。
あのような女を見ると,侮ってはならないと思いますね。」
「佐伯先生もお酒が過ぎたのではないですか。そのような商売をしている女性のことをここまで褒めたたえるなんて」
孝秀は呆れた。
「酒が過ぎた,そうなのかもしれません。でもそれなら羽目を外しついでに,倉持先生にもご覧いただきましょう。私の自信作です。
この一枚目は,着物を着たままの姿です。気が強そうですが品がある,それから・・・」
饒舌になった佐伯は,目の前の倉持が鬼のような形相で自分の襟首をつかんでいることに気づくまで時間を要した。
そこで縛って描いた女は素晴らしかったです。端正で控えめだが芯が強い。もともとは立派な家のお嬢さんらしくて,自分から身売りをして家を救ったんだと女将が熱心に褒めていましてね。
まだ客を取り始めて日が浅いということだったが,あれは本当に凄いと思いました。
私だけではなく,五助も,五助はこれまでにあちこちでいろいろな商売女を見てきているが,あんなのは初めて見たと言っていました。
まあ五助の奴はいろいろと調子に乗って,彼女に恥ずかしい体勢や苦しい体勢を長時間させたり,触ったり摘まんだりしていたのですが,あの娘,確か葵と言いましたが,彼女は一度も嫌がらずに素直で,それどころか声も立てなかった。何を命じられても「はい」ときちんと答えるだけです。
でもぼんやりとされるままになっているのではなくて,切なさも恥じらいも情欲もすべて目の色に滲み出てきます。色白な身体が薄紅に染まり,奥から蜜が零れだしてくるのです。
私も本気で抱きたいと思った。そこまで思ったのは初めてです。
沢山の絵を描き終えて,終わろうとしたとき,それまで「はい」としか言わなかったのが,どうか一度だけ入れてほしいと言い出しました。
交わっているところを描く予定は最初はなかったのですが,願ってもない話です。
五助と交わっているところをさらに何枚も描きましたが,あのときは本当は自分が,あの女を抱きたいと思いましたね。
五助も勧めてくれたのですが,さすがに絵師としての矜持が邪魔をして邪険に断りました。
それでも今も思い出しますよ。
あのような女を見ると,侮ってはならないと思いますね。」
「佐伯先生もお酒が過ぎたのではないですか。そのような商売をしている女性のことをここまで褒めたたえるなんて」
孝秀は呆れた。
「酒が過ぎた,そうなのかもしれません。でもそれなら羽目を外しついでに,倉持先生にもご覧いただきましょう。私の自信作です。
この一枚目は,着物を着たままの姿です。気が強そうですが品がある,それから・・・」
饒舌になった佐伯は,目の前の倉持が鬼のような形相で自分の襟首をつかんでいることに気づくまで時間を要した。