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女鑑~おんなかがみ~
第2章 妹分
連れてこられた少女に、夕顔は見覚えがあった。はっきりとしたことは分からない。けれど、名乗られたときに確信した。
「川本村から参りました、倉持操子と申します。何卒よろしくお願いいたします。」

大騒ぎして泣きながら売られてきた自分は極端な例としても、こんなにはっきりと挨拶をする少女を夕顔は見たことがなかった。たいていの娘たちは、ぼんやりと立ち尽くしたまま、聞かれたことに対して首を傾げるかうなづくかの返事をするだけなのだ。

「あ、私はここでは夕顔、夕顔姉さんと呼んでくれたらいいから。」
焦っているのは、行儀のよい挨拶に圧倒されたから、だけではない。
「くらもちみさこ」確かにこんな名前だった。
けれど、だとしたらあの倉持木材のお嬢さんがこんなところになんて。

可哀想に、という気持ちと、ざまあみろという気持ちが、胸のなかで行きかう。
同姓同名ということもあるだろうか。
「いくつなの」
「十六になります」
そうか、だとすると四年前は十二歳。たしか当時女学校の一年生だと聞いた気がするので計算も合う。まさか。

「とりあえず、そこに座って、火鉢に湯があるから私の分と両方、汲んでおいで」
少女は慣れない手つきでだが、湯を汲んで、丁寧に差し出した。
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