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女鑑~おんなかがみ~
第2章 妹分
「あんたは、家を助けるために、身を売ったのかい」
何から聞いてよいのかわからないが、妹分であるからにはある程度は知っておきたい。

「はい。それで家が少しでも助かるのならと思いました」
間髪を入れずに返事が返ってくる。
「親孝行だね」
「はい、ありがとうございます。親孝行は大切と修身でも習いましたので」

この娘は、こんなところに来るよりも、もっと別に行くべき道があるだろうと思う。女学校まで出ているのなら教員になることなどはできなかったのか。湯を一口飲んでから、次の言葉を考える。

「でも、家のために、身を売るのは辛いだろう」
「はい、しかし、少しでも父が商売をやり直せればと思いまして」
あまりにも冷静すぎる。まさか、十六にもなって遊郭が何をすることろか知らないのか。だとしたらあまりにも哀れだ。昔、年端も行かぬ娘が、水揚げの後、衝撃を受けて首を括ったという話は何度か聞いている。

「お前、この遊郭が、何をする商売かは、大体知っているのかい」
それまで質問に間髪入れず答えていた操子が、一種身体を固くして、唇を噛んだ。頬が紅潮している。
多分、これは大体は、知っているということだろうか。

「お前さん、確かに生娘なのか」
「はい、間違いありません」
「月のものは」
「女学校の二年で、いえ一昨年に始まりました」
行儀のよい正座を崩すこともなく、姿勢を正して返事をする操子に、夕顔は何とも言えない苛立ちともどかしさを感じる。
本当にあのときの操子嬢ちゃまなのか。
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