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『公衆便所姫』
第1章 -1-
「はい、これ」
「……」
「なんだよ、その目は。……一人じゃできないの?」
湊はしゃがみ込み、薄ら笑いを浮かべて僕の顔を覗き込む。
「……」
……こいつは、僕に触れたりしない……
僕が苦しむ顔を見たいのはいっしょみたいだが、圭吾や腰宮みたいな変態とは毛色が違う。
「色んなヤツの便所になって、もうガバガバなんだから……これくらい、入るよね?」
床にある箱を拾い上げた湊は、中から未使用の鉛筆を一本取り出す。そして無様な格好をしながらも、湊を睨む僕の目に、その先端を向けた。
「……」
……こいつなら、本当に目を刺して潰してきそうだ……


「……はい、十本~」
何かの歌をパロっているのか……鼻歌交じりに、箱から取り出した鉛筆を渡してくる。
「後二本で記録達成だね。さすが姫。あぁ、でも安心して……鉛筆ならまだ二ダースあるから」
湊がニコッと可愛らしい笑顔を向ける。
小柄で童顔で……普段は虫も殺せないような純粋無垢な顔をして……クラスメイトや寮生の、ある種アイドル化されている。
そのカマトトぶった顔を何度、殴り倒したいと思ったか知れない……
腕力なら、僕の方が上だ。
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