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結螺(ゆら)めく夏
第2章 夏祭りの夜



大部屋に移り二週間が経ったある日
この遊郭街にも夏祭りが開催される事になった
今日ばかりは大門通りに出店が立ち並び、遊男達も馴染みの客におねだりしてお祭りに出掛けたいと、そわそわしている
花魁以上になれば、簡単に外には出られない為、この時ばかりは下級遊男で良かったと、大部屋の遊男達が集まって談笑していた


「……そう言えば、さっき龍次が新人を連れて楼内を案内してたよ」
「龍次も大変だねぇ…何もこんな忙しい時に、売られて来なくても、ねぇ……」


祭りとなると、どさくさに紛れて抜け出そうとする遊男が後を絶たない
それを見張るのは、数人の若い衆と遣り手である龍次の仕事だ
加えて新人の遊男が来たとなると、その世話にも追われる事になる


「結螺は今夜、お祭りに行けそう?」

大部屋に移ってから、唯一親しくしてくれる夕凪に声を掛けられる

「……あ、えっと……」

無垢そうな笑顔を向ける夕凪に、僕は言葉を濁した


以前龍次が言った通り、僕にはまだ馴染みの客がいない
感じすぎて直ぐにイッてしまう上に、手練手管という上手い駆け引き等が出来ない僕は、客にとってつまらなく銭を払う価値などないようだ
朝まで一緒に……なんて客はいないし、声すら掛からない日も珍しくない

「夕凪は?」
「昨夜、約束してくれたから……多分行けると思う」
「そっか、良かったね」


……お祭り、か…


もし榊様が通い詰めていた頃だったら
きっと、僕を連れ出して一緒に金魚掬いなどしてくれただろう……


そんな寂しい事を想像していたら、龍次に預けた琉金を思い出し、一目見たくなってしまった


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