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結螺(ゆら)めく夏
第2章 夏祭りの夜
……龍次……
龍次の指が離されたのを最後に
僕は完全に意識を手放した
……すー、すー、
寝息を立てる僕の唇に
龍次の指先がそっと触れる
「……お前を仕込めなかったのは、感度のせいなんかじゃねぇ……
……俺が、冷静に対処できる自信が無かったからだ」
その指が、ゆっくりと愛おしむ様に下唇をなぞる
「………遣り手、失格だな」
そう呟き静かに指を外すと、今度は下になった方の僕の頬を手のひらで包む
「もしお前が年季明けまで、誰にも身請けされなかったら
……俺が貰ってやるから、覚悟しとけよ」
龍次の言葉は
既に夢の世界へと旅だった僕には届かない……
金魚鉢の中で泳ぐ二匹が
キラキラと輝く月光の中で体を寄せ合い
優雅に尾鰭を揺らめかせる
その金魚鉢の前で眠る僕に
龍次の顔がそっと寄せられた
-終わり-