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振り向けば…
第9章 もう少しだけ頼むわ…
翌朝は気持ちがすっきりとしてた。
朝食を食べてからレンタカーを借り、お台場に悠真と向かう。
「2時間程度で終わると思う。」
「適当にその辺をブラブラしてるよ。」
「1人で大丈夫か?」
悠真がやたらと心配する。
「大丈夫だよ。」
「なんかあれば…。」
「必ず悠真に連絡する…、でしょ?」
「迷子にだけはなるなよ。」
そう言うて悠真が仕事に向かった。
一緒に東京に居る間に悠真の携帯には何度か仕事相手が電話を掛けて来る事があった。
悠真はその相手をクライアントと呼んでた。
私にはさっぱりわからない難しい話をする悠真を何度も見た。
その仕事で悠真が100万単位を稼ぐ事も知った。
すっかり大人の悠真に甘えるだけの私が居る。
早く大人になりたいと少し気持ちが焦ってた。
その失敗が先輩との恋愛だと思う。
もっと大人にならなければと理解をした夏だった。
「東京タワーに行くぞ。」
仕事を済ませた悠真が妙に張り切ってる。
「そんなに張り切る場所か?」
「お前、前から見たいって言うてたやろ?」
悠真の言葉に驚いた。
1度だけ、そんな話を悠真とした事がある。
小学校の修学旅行は広島。
中学は長野、高校は沖縄…。
「修学旅行の定番って東京タワーじゃないの?」
「東京タワーが見たいんか?」
「日本人が1度は見るもんやろ?」
その程度の会話。
それを悠真が覚えてる。
私との思い出を悠真はどれだけ覚えてる?
私の知らない悠真はどれだけ存在したの?
何も聞けないまま悠真と東京タワーを見た。
「何もないんやな。」
東京タワーの周りは公園で何もない事実を知った。