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振り向けば…
第9章 もう少しだけ頼むわ…



アリスの案内人でニヤニヤと笑うだけのチシャ猫にアリスがキレる気持ちがわかる。

恋愛事情の世界で迷子になる私を嘲笑う案内人の悠真にキレたくなる。


「久しぶりにDVDでも借りに行くか?」


映画でも見ようと言う悠真に頷くしか出来ない。

今は悠真と離れるのが怖いとか思う。

家にはお父さんが居ない。

そこまではしないと思うけど先輩が押しかけて来たら私はきっと普通の対応なんか出来ない。

コンビニに行って悠真とDVDを借りる。

ソファーのお父さんの指定席に悠真が座る。

私はその足元…。


「なんでソファー?」

「狭いんだよ。」


180cmまで伸びた悠真が笑う。

肩幅も広くなった。

完全に大人の男になった悠真の足元に小さな私が座ってる。

ずっと悠真に守られてるのはわかってる。

だけど悠真にその気がないのもわかるから私と悠真の距離はずっと変わらないままだった。

一週間もした頃に学校で教室から出ようとした私の前に先輩が立ち塞がる。


「ねぇ、頼むから話をしよう。」


懇願する先輩と私の間に悠真が割って入って来る。

丸めたノートを握って自分の肩を叩く悠真。


「来夢になんか用か?」


低く響く声で悠真が先輩を見下ろして威圧する。


「君には関係ない…。」


もごもごと頼りなく先輩が言う。


「ああ?来夢は今は俺の女だよ?気安く声掛けてんじゃねぇよ。」

「それは…。」


先輩が俯いた。

ギラギラとした目で悠真が先輩を睨み続ける。

私には、その悠真の広い背中に『喧嘩上等』の文字が見える。

龍平おじさんが居る。

お父さんが悠真を助けたように、お父さんに頼まれた龍平おじさんが私を助けてくれる。


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