この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第9章 もう少しだけ頼むわ…
本来の悠真は明るくて軽い話し方しかしない。
人懐っこくて誰からも好かれる人だ。
その悠真が心底から敵意を剥き出しにする時は必ず龍平おじさんの存在を感じる。
悠真の中に龍平おじさんが居る。
「行くぞ…。」
完全に悠真に怯えた顔をする先輩を尻目に悠真は私を連れて立ち去った。
更に一週間もすれば先輩の姿が私の周りで見られる事はなくなった。
「本気で好きな女だったらビビッて逃げてんじゃねぇよ。」
悠真が呆れた顔で笑ってる。
けど…、悠真…。
龍平おじさんは怖いよ。
悠真に言えない言葉を飲み込む。
悠真と過ごす時間は増えたけど、先輩が私を完全に諦めたとわかった頃から悠真は私から離れてた。
「今田君と別れたの?」
そんな事を彩が聞いて来る。
「違うって…、ここだけの話にしてよ。」
彩には本当の事を伝える。
「わぁ、良かったね。今田君って優しいね。」
彩が納得をしてくれて少しホッとする自分が居た。
悠真と恋愛はしない。
悠真は私をそういう風に見ていない。
家族という感覚だから…。
私を守ってはくれるけど私を叱ってはくれない人だと理解をした。
年末にお父さんが帰って来た。
「牛タンでバーベキューしよう。」
そう言って会社の人達を集めてうちの庭でバーベキューをした。
悠真が悠真のお母さんと来る。
私は悠真になんと言って話し掛けるべきかがわからずにその日は悠真と口を聞く事はなかった。
日下先輩から電話が来た。
「何かありましたか?」
日下先輩がわざわざ連絡をして来るとか珍しい。
「ちょっと…、暇ないかな?」
今はお正月で学校がないから暇だった。