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振り向けば…
第13章 悪かったから…
扉を抜けた先にはお洒落なシステムキッチンにカウンターテーブル。
そして広いリビング…。
馬鹿デカイ革張りのソファーの正面には事もあろうにホームシアターという高級品が見える。
舐めとる…。
それが最初の印象だった。
ただし女の気配は感じない。
簡素というか…。
そこには悠真が好きな物しか存在をしていないと思う空間。
散らかったブルーレイディスク…。
飲みかけのジュース…。
悠真が欲しかった世界がそのままそこには存在する。
私はそこには入らなかったのか?
悠真に聞いてみたくなる。
ドカッとソファーに座ってやる。
何故か悠真が私の足元に正座する。
怯えた顔をしとる。
完全にバツの悪そうな顔…。
「今日は何の日か知ってるか?」
意地悪く聞いてやる。
「オッチャンの…、全快祝いです…。」
当然、悠真も呼ばれてたのだと理解をする。
「そりゃ、うちのお父さんやからな。悠真のお父さんやないのはわかっとる。けど、顔すら出さんいう事は悠真にはお父さんがどうでもええって意味か?」
嫌味を悠真に連ねてた。
「俺…、お前を傷つけた。その俺が今更、どんな面してオッチャンの前に行けるねん?」
だから悠真は逃げ出した。
これ以上はお父さんの世話にはならないと、このマンションを買うたらしい。
悠真のお母さんにも一緒に暮らそうと言うた。
けど、おばちゃんの返事は
「うちが出てったらアパートの管理人が居なくなるやろ?あんただけ1人で出て行け。」
という冷たい答えだった。
実は悠真の携帯はお父さんの会社名義…。
私のも同じ名義…。
昔は法人契約なら同じ会社の人だけ通話が無料になるというシステムだったからお父さんがまとめ買いをしたのだと言う。