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振り向けば…
第13章 悪かったから…
携帯をお父さんに返し、うちの鍵をお母さんに返し、悠真はただ逃げ出した。
我が家から僅か5分の距離に…。
アホや…。
そう思う。
情けない顔で俯く悠真の頭を撫でてやる。
「もう…、うちの家族とは違うんか?」
「来夢は俺にとっては家族や。だから来夢の傍には居たいんや。」
そこには恋愛感情はない。
それでも私も悠真と居たいと思う。
「悠真もうちの家族なんやから…、お父さんのところに行こうや。」
悠真が私に抱きついて来た。
2人で手を繋いでお寿司屋さんへ向かう。
「ほら、お前ら。主役なんやから並んで座れ。」
何故か私と悠真が上座に並んで座らされる。
「主役はお父さんやろ?」
「お前らの卒業祝いもする。春からもう立派な社会人やからな。大人になった祝いや。」
お父さん達がビールを注文してガンガンと飲む。
私と悠真の祝いはお酒を飲む為の言い訳。
「飲み過ぎんといて…。」
お母さんがお父さんに目くじらを立てる。
「祝いの席で堅いこと言うなや。」
私と悠真をダシにしてお父さん達が飲み続ける。
「おばちゃん、これ…。」
悠真のお母さんがへべれけになる前に悠真のマンションの鍵を返そうと思った。
「お前が持っとけ。」
悠真が私を止める。
「電子ロックやからスペア作るのが面倒なんや。オカンの分はまた今度ゆっくり作るから、それは来夢が持っててくれ。」
万が一の時などに私が持ってた方が助かると悠真が言う。
一人暮らしをして、ご飯とかに苦労してる悠真が嘆いてた。
「ほな、これは悠真が持っとき。」
我が家の鍵を悠真に返してやる。