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振り向けば…
第2章 俺を呼べや…
悠真が一応は自分で計算をしている事実に驚きが隠せない。
ただのアホやとばかり思うてた。
夏休みが終わり学校では悠真と全く話をしない。
そろそろ男の子と話をすると冷やかされたりして嫌な思いをする時期だから…。
だから夏休みの思い出の作文は悠真と一緒だったのに私の作文に悠真は全く登場せず、悠真の作文にも私は登場する事がない。
その代わりに携帯を使っての悠真とメールのやり取りが増える。
『腹減った。』
『おばちゃんは?』
『まだ仕事や。』
『肉まんあるで…。』
『そっち行く。』
10分後には私の分の缶ジュースを持った悠真が家に現れる。
電子レンジで温めた肉まんを2人で食べる。
ついでとばかりに悠真と宿題をする。
結局、悠真は私の家で晩ご飯を食べてから帰るという日々が続くようになった。
5年生の秋…。
「来夢…、話がある。」
お父さんが私と2人だけで話がしたいと言い出した。
初めてお父さんが癌だと明かされた。
前の2回は大腸癌…。
今回は胃に転移したんだとお父さんが言う。
しかもリンパにも転移してるから、かなり危険だという説明に泣きたくなって来る。
「手術で出来るだけ取るけど、どうしても一部が残ってまうねん。それを抗癌剤で治療するんやけど、入院には半年以上の時間が必要になる。」
ステージ4だと言われた以上は私には事実を伝えようとお父さんが決意した。
「来人とお母さんを頼む。」
お父さんが私に懇願する。
なんでなん?
私だって辛いのに…。
なんで私だけに来人とお母さんを押し付けんの?
泣きたくなる自分に我慢をするだけで精一杯だった。