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振り向けば…
第2章 俺を呼べや…



思っていたよりもお父さんが早く帰って来る。


「意外と手術に成功してな。これが医学の進歩ってやつやな。」


くだらない冗談にお父さんが笑う。

私には笑えない。

もしかして、もう手遅れだからお父さんは病院から見捨てられたのかもしれないという不安を妄想する。


「5年間は再発をしなければ癌って完全に治った事になるんやで。」


あまりに不安がる私にお父さんが今から5年の間に入院をしなければ、2度と入院をする事がないのだと約束をしてくれる。

5年間…。

私が中学を卒業するまでだ。

何度も自分にそう言い聞かせる。

それまでに自分のやりたい道を決めなければならない。


「お母さん、お父さんの会社で働くには何が必要なん?」


お母さんと将来の自分について会話をするようになった。


「建築、もしくは土木の施工管理の資格や。お父さんの会社の施工管理はお母さんが取ったけど2級やから仕事に限界があるねん。1級が取れたら凄い事になるんやけどな。」

「施工管理…?」

「それを取るには大学に行く必要がある。」

「必ず大学に行くよ。」


もうすぐ、小学校を卒業する。

中学校での目標を決めておきたかった。

悠真とは将来の話をする。


「あー…、高校受験とかまだまだ先やんけ。」

「今から真面目に考えとかんと受験に失敗するんやで…。」


航大が私立中学の受験に失敗した。

この時、私と悠真は世の中はお金持ちでも不可能な事があるのだと悟った。


「俺は苦労なんかせんと楽して生きる。」


ニヤリと笑い親指を立ててイエイとポーズを取る悠真をアホだと感じる。

既に苦労しとるくせに…。

やっぱり悠真ってアホの子や。

ひたすら悠真に呆れるだけの私だった。


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