この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第16章 トイレマット…
「監督さん、久しぶりやな。」
ご機嫌なデザイナー。
「お久しぶりです…。」
とりあえずは笑顔を向けてやる。
「まぁ、設計自体は完璧に終わってるんやけど、監督さんの意見が聞きたいねん。」
「私の?」
「モデルルームの時も意見をくれたやろ?」
モデルルームの時の私の意見…。
それは下駄箱の固定棚の事…。
中仕切りの板を壁に固定するやり方を見た時に
「これってブーツとか入らないし、傘立てが別に必要になるんですね。」
と言うただけ…。
デザイナーはすぐに私の意見を取り入れ棚を可動式にして配置変更を決めた。
大工さんはその程度の変更は容易いと言うてくれたので工期的にも予算的にも問題がなかった変更をデザイナーが再び私に求めて来る。
まだモデルルームは開いているからとデザイナーと下見に行き、女性が嫌がる部分の変更などを打ち合わせする事になる。
モデルルームに行き、久しぶりに会うた施主である不動産会社の担当者からは
「デザイナーズは使い勝手を気にする女性が多くて、ブーツや傘など全てが収納出来る玄関が好評だったんですよ。」
とまで賛辞を受けた事から、マンションの本体建築も女性である私がいいとなったらしいと思う。
今回のデザイナーズはあくまでも収納にこだわったデザインになる。
余計なものが見えないようにするというデザイン。
だから台所などは食器棚などの後付けは必要がないように収納の多いシステムキッチンを取り入れてる。
「私が不便に感じるのは…、クローゼットの上にある棚ですよね。」
「棚がある方が便利だよね?」
「だって…、私は届きませんよ。」
ウォークインクローゼットが売りのマンション。