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振り向けば…
第17章 遠い過去…



「なら、俺の夢を聞いてくれるか?」

「お父さんの夢?」

「来夢の花嫁姿を見る事や。」

「私の…。」

「その為に癌になっても絶対に死ねんとばかり考えてたんや。」


初めて聞くお父さんの希望。

私が笑ろうてるのがお父さんの生きる希望なんだと悠真が言うてた。

幸せな花嫁になる事をお父さんが望んでる。


「お母さんは心配なだけやねん。そりゃ、悠真とお前が結婚してくれたら一番嬉しい事なんや。息子として暮らして来た悠真やからな。気は使わんし、悠真も立派な男になったとお母さんかて喜んでる。」


お父さんが言わんとする意味がわかる。

悠真が居たら私に彼氏すら出来ない可能性。

行き遅れになれば不憫だと言うお母さんの心配をお父さんが語ってくれる。


「でも、まだお父さんの娘のままがええ。」


私の気持ちを素直に伝える。

まだ我が家という世界から出たくない私。


「ええよ。来夢も来人も早く大人になろうとばっかりしてたからな。まだお父さんの子供でええんやで。」


久しぶりにお父さんの大きな手が私の頭をゆっくりと撫でてくれる。

この手の中にまだ居たい自分が居る。


「お父さんが世界一好きだよ。」

「おうっ!お前は俺の自慢の娘やからな。」


お父さんと久しぶりにじゃれあって子供みたいにキャッキャッと笑う私が居た。

仕事は順調に進んでる。

悠真とも相変わらず。

夏になり、私は日下先輩と玲奈さんの結婚披露宴に参加してた。


「久しぶりだね。」


穏やかに私に笑顔を向ける拓也さんが私の隣の席というのに少し驚いた。


「お久し…、ぶりです…。」


緊張して噛み噛みになる。


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