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振り向けば…
第19章 ここまでだな…
「陸っ!こっちに来とけ!」
海斗さんが叫ぶ。
陸と呼ばれたのは海斗さんの弟の陸斗(りくと)さん。
この兄弟はびっくりするほど仲良し小好し。
25歳になる弟さんは海斗さんに比べて小柄で痩せてて髪はほんの少し茶髪という程度で真面目に見える。
朝はバイクで仲良く出勤して来る兄弟。
うちのお父さんの時代とは少し違うらしいが、海斗さん達兄弟も就職するまではぼーそーぞくをやってたと聞いた時は驚いた。
お父さん達のような人は既に化石だと思うてた。
しかも、この兄弟…。
ぼーそーぞくを辞めた現在はファイターだと言う。
「森本さん…。」
現場が終わると監督さんから森本さんへと呼び方が変わる。
私を呼ぶのは海斗さん。
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様です。これ、この前に言うてたチケットね。」
「ありがとうございます。」
海斗さんからチケットを2枚、買い取った。
これは海斗さんが出る試合のチケット…。
弟の陸斗さんはアマチュアだが、海斗さんはプロとして試合に出ている格闘家。
休憩時間にそんな話を聞いて、ますます海斗さんには驚いた。
海斗さんはシュートボクシングという世界のプロのファイター…。
「なら、海斗さんもテレビに出たりするんですか?」
小さな頃、お父さんが知り合いに買わされたチケットで、いわゆる普通のボクシングは何度か観に行った事がある。
世界タイトルなど大阪でやる試合が幾つかあり、その度にチケットを買うて欲しいとお父さんが頼まれて買うて来る。
そういう試合は四箇所にテレビカメラが設置されてるのを何度も見た。
「俺は日本ランキングですら下の方やから、テレビは絶対に無理だよ。DVDとかには出てるけど…。」
テレビに出れるクラスは世界ランキングの人だけだと初めて知った。