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振り向けば…
第3章 他の奴とは行くな…
「パソコンの画面が小さいから迫力がないな。」
悠真がボヤく。
「なら、うちのテレビで観るか?」
うちのテレビはやたらと大きい。
「大は小を兼ねるんや!」
新しいもの好きで大きいもの好きのお父さんがお母さんの反対を押し切って、リビングを狭くするような大画面の液晶テレビを買うたからだ。
「ええんか?」
「夜中なら、誰もテレビなんか観いへんやん。」
春休みだから夜更かしをしても大丈夫。
コソコソと2人でレンタルのDVDを借りに行きコンビニでジュースやお菓子を買い込む。
お父さんが笑いながら私と悠真にお小遣いをくれるから春休みの深夜は映画三昧の毎日。
私だけなら夜にコンビニに行くと怒られるけど悠真となら怒られない。
クッションや毛布を準備して完全装備で悠真と観る映画は様々なもの。
SF、アクション、ミステリー…。
戦争ものだけは私が苦手だから避けてくれる。
修学旅行が広島だった。
小学生の女の子には原爆資料館はあまりにも強烈過ぎて恐怖で私の足が竦んだ時に悠真が
「下向いて、俺について来い。」
と言うて通路を抜けてくれた。
それ以来、戦争に対する恐怖が私の中に芽生えた。
それを知っている悠真はグロテスクな映画は選ばないようにしてくれる。
昔の白黒映画も観た。
「やばい!この人…、カッコいい!」
西部劇のカウボーイ役をする俳優さんに惚れ込んだ。
「映画は美人が出てる方がおもろいわ。」
口を尖らせる悠真。
それでも観たい映画は必ず私が観たいものから優先してくれる。
朝にお母さんが起きて来ると寝てる私に枕にされてリモコンを握ったままの悠真が寝ているのが当たり前の日常になった。