この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第23章 雨や…
翌日は鳴門大橋の手前まで足を伸ばす。
悠真が前にテレビで見た雲丹しゃぶを食べたいと言うたから…。
「これぞ、究極の贅沢。」
「やば美味!」
2人で取り合いになるほどの美味しさ。
「贅沢ってのは人の価値観や。来夢は来夢の価値観で判断すればええんや。」
そない言うてくれる悠真と連休はのんびりと過ごす。
焦る事はない。
本当に焦るのは…。
きっと悠真を失う時…。
だから今は悠真にひたすら甘えるだけの私だった。
連休が明けるとお父さんが帰って来る。
「お父さん…。」
昼間からリビングのソファーでビールを煽るお父さんの足元に座る。
癌なのにビールもタバコも辞められなかったお父さんだけど昼間から飲むような人じゃない。
いくら休日とはいえ、こんな姿を家族に見せせる人なんかじゃない。
熊本で何かがあったと思う。
「お父さん…。」
「クソッタレが…。」
口汚くお父さんが誰かを罵る。
「お父さん…。」
さすがに不安になる。
私はぼーそーぞく時代のお父さんを知らない。
リーダーと呼ばれてたお父さんを知らない。
だって今は社長と呼ばれてるから。
不安がる私の頭をお父さんが撫でてくれる。
私には優しくて甘いだけのお父さん…。
「熊本の行政からな、大阪の業者を入れる事は出来ん言われたんや。」
ゆっくりとお父さんが熊本での話をする。
それは東日本の時もそうだったはず…。
あくまでも復興なんだから、地元業者が元請けになり、お父さん達は下請けになる。
ただ東日本の時はゼネコンが入ってた。
だからお父さん達は下請けでも納得した。