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振り向けば…
第23章 雨や…
今回の熊本では地元業者というても小さな業者。
しかも…。
「その業者がな、請け負いは出来んから常用しか契約せんとか言いやがる。単価は1万5千やと?大阪の業者を舐めるにも程があるわ。」
とお父さんがキレてた。
請け負いの場合、現場に対しての決まった金額の中で経費などを計算して仕事をする。
常用とはあくまでも人工賃だけの仕事…。
その日当が1万5千という話…。
「有り得へん!」
思わず、そう叫ぶ。
最低でも行政からの人工賃は2万8千以上の単価が出てるはずや。
ましてや、お父さんはオペレーター(ユンボなどの重機操縦者)だ。
大阪で普通に仕事をしても3万近い単価を貰うてるお父さんが衣食住の経費を使ってまで1万5千の単価で雇われるとか有り得ない。
「だから…、元請けに確認したったんや。どんだけ抜いて儲ける気なんやと。」
お父さんが鬼の形相へと変わっていく。
「そいつ、なんて答えたと思う?『県会議員のある人物に流す金が必要なんです。だから常用の1万5千が限界でうちに儲けなんかありません。』とかぬかしやがった。」
まるで火事場泥棒の話だ。
震災にかこつけてお金に群がる人達が居る。
しかも、それが街の行政を握る権力者だと言う。
「街の人らがほんまに困っとるのは事実や。けど、その県会議員とやらを選挙で選んだんは街の人らやからな。可哀想や思ても助けてやる義理はない。」
吐き捨てるように言うお父さんの言葉が辛かった。
「警察に言うべきじゃないの?」
「その金がほんまに県会議員に流れてるかまでは俺は確認してないから無理や。元請けの言い訳かもしれんし、ほんまに県会議員が食うとるかもしれん。」
証拠が無ければ意味がない。
ましてや、お父さんは地元の人間じゃない。