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振り向けば…
第3章 他の奴とは行くな…
なんかあっても電話なんか出来る訳がないやん。
龍平おじさんとの思い出の時間を邪魔なんか絶対に出来ない。
悠真に後ろめたいまま、日曜日に高橋君と待ち合わせの駅前に向かった。
私の家の周りは商店街はあるけど映画館などはない。
30分ほど電車に乗って終点にある大きな街に出る必要がある。
「ラッキー、空いてるから座れる。」
高橋君がすぐに電車で椅子に座る。
悠真は一度も座った事がない。
「お年寄りが来てから慌てて席を譲るよりも最初っから譲ってたらええねん。俺ら若いんやし。」
悠真はそんな考え方する子だ。
だから悠真と並んで座った事すらない。
「森本さん、座らないの?」
高橋君が聞いて来る。
「えっ?」
ガラッガラッの電車で私だけ立ってるのも不自然だからと高橋君の隣りに座る。
「映画はいつもどんなん観るの?」
「実話の映画とか好きだよ。」
中世のイギリスの女王の映画、インドの独立運動をしたお坊さんの映画…。
映画のお陰で嫌いだった歴史が好きになった。
「うわっ!?森本さんってやっぱりレベル高っ!」
大袈裟に高橋君が言う。
違うよ。
悠真が好きな映画を観てたらそうなったんだよ。
その一言が言えない。
悠真のレベルと私は同じなのだと認めたくない。
だから映画の話から無理矢理に高橋君のサッカーの話に切り替える。
映画の話ばかりしていると悠真の事ばかりを思い出して嫌になる自分が居る。
意味がわからないサッカーの話を聞いているうちに電車は目的の駅に着いた。
映画館で高橋君が高橋君のお母さんから貰ったというチケットを出してくれる。