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振り向けば…
第26章 欲しいと思うなら…
私の手を握り、私の速度に合わせてゆっくりと歩いてくれる。
いつも、こんなエスコート…。
道路は必ず悠真が車道側。
自転車などの通行人が来れば必ず私を引き寄せて立ち止まる。
「せかせかと歩いて事故や怪我をしたら元も子もないやんけ。」
それが悠真の名言…。
いつから悠真がそんな風になったのかを考える。
少なくとも中学の時にはそんな悠真になってた。
何故、そんな風になったの?
不思議に思うて悠真を見る。
「どうした?」
悠真も不思議そうに私を見る。
「いつも私に合わせて歩くよね?」
「そりゃ、来夢さん…、足が短いから。」
「やかましい!」
悠真を蹴飛ばしたくとも浴衣だから出来そうにない。
だから、そっぽを向いて歩いてやる。
「怒んなや。」
「知らん。」
「お前、人混みとかすぐに流されたりするからお前に合わせたらんとあかん思うただけや。」
「いつから?」
「小学校ん時やったかな?オッチャンと天神祭に行ったん覚えとるか?」
大阪で一番大きなお祭り…。
毎年、7月にあるお祭り…。
28万人が集まるというお祭りだから弟の来人は連れて行けないとお父さんが悠真と私だけを連れて行ってくれたお祭り。
「うん…。」
「あの時、携帯も通じへんから来夢から絶対にはぐれんとってくれってオッチャンに言われたんや。」
お父さんの言いつけで今も私のエスコートをする癖がついた悠真。
全てがお父さんの命令に従っただけ…。
なら私を抱くのもお父さんの命令なの?
そう考えると悲しくなる。
「来夢…。」
私の泣きそうな顔にはいつも敏感な悠真が私の顔を覗き込む。