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振り向けば…
第27章 重く低い声…
私の現場は宮崎さんが見てくれてたから予定通りに進んでる。
きっとお盆休み前だというのに現場の最後の安全確認や報告書で宮崎さんは残業になったに違いない。
しっかりしなくっちゃ。
気を引き締める。
もうミスは許されない。
私の中の優等生感覚が蘇る。
「現場に行って来ます。」
昼前には会社を出る。
病院建設とマンション建設。
病院建設は予定として今日からエレベーターが設置されるから、それに立ち会う必要がある。
だからマンション建設は夕方のギリギリに現場に行く事になる。
「体調を崩したって?」
病院のエレベーター設置を無事に済ませてからマンション建設の現場に行くと真っ先に海斗さんが駆け寄って来て心配そうに私を見る。
「もう大丈夫ですよ。遅くなったけど、これお土産ですから現場の皆さんで分けて下さい。」
鹿児島のお土産を海斗さんに預ける。
「旅行に行く元気があったなら大丈夫やな。」
「私が女だからって会社が大袈裟に騒いだだけなんですよ。」
「うちの会社に見習わせたいな。俺が倒れても見向きもしてくれんわ。」
建設業界では過労気味の労働が多いのは事実。
そんな業界で私の身体の心配をしてくれた会社に感謝をする。
「明日はまたミキサーが入るから昼前には来て貰えるか?」
「わかりました。」
工程などの打ち合わせをして会社に戻る。
報告書を作成しようとした時…。
「森本さん…。」
宮崎さんが苦笑いをして私を見る。
「なんかありましたか?」
「いや、あのお菓子…。」
「はい…。」
「通販は出来るんかなって社長が聞いてた。」
「通販ですか?」
確か、お菓子屋さんに問い合わせれば大阪に宅配便を送るのは可能だとお店の人が言うてた。