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振り向けば…
第28章 シンデレラ…
悠真がかなりやつれてる。
「ゆう…。」
「ん?」
「ご飯…、食べてや。」
「ああ、悪い。〆切り前やねん。」
「でも食べてや。」
「わかった。」
やっと悠真が仕事部屋から出てくれる。
「今回の〆切りってキツいんか?」
「かなりな。今月いっぱいはかかる。」
今は11月。
「その代わり12月は目一杯休む予定やから、そんなに気にすんな。」
無理に悠真が笑う。
「それでも…、ご飯だけは食べてや。」
「努力はする。」
一応は私とご飯を食べてはくれる悠真に安心する。
「なぁ、悠真…。」
「なんや?」
「あの噂…。」
「なんの噂や。」
「私と悠真が兄弟って噂…、知ってたんか?」
「まぁな…。」
悠真の箸が止まる。
私を真っ直ぐに見る。
「知ってたなら、なんで教えてくれへんの!?」
「来夢は鈍いからな。それに知ったところでどうにもならんやろ?」
「けど…。」
「オカンかてオッチャンに迷惑になるなら引っ越すべきかって悩んでたんや。」
それはそうだと思う。
愛人の噂を立てられたら龍平おじさんに申し訳が出来なくなる。
薄らな記憶の中ででも私は龍平おじさんを覚えてる。
『やっぱり女の子も欲しいな。』
そう言うては私を抱っこしてくれたおじさん。
今の悠真は本当に龍平おじさんにそっくりだと思う。
だからこそ、愛人だとか隠し子だとか言われる覚えのない悠真の家族からすれば嫌な噂でしかない。
「だから他人は嫌いなんや。」
悠真がそう呟いた。
私よりも人懐こいくせに私よりも他人を拒否する悠真が居る。
悠真が人を寄せ付けない理由が少しだけ見えて来た。