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振り向けば…
第28章 シンデレラ…
悠真がお店のお姉さんとまた何かを話す姿をぼんやりと見てまう。
「さて、行くか…。」
「ありがとうございました。」
お店の人達が一斉に悠真に頭を下げる。
再び悠真と車に乗り移動する。
「あのお店の人は知り合い?」
「何回か一緒に仕事をした人。」
芸能人のメイクなどもするというプロのメイクさんのお店らしい。
悠真の仕事の世界は私みたいな平凡な仕事をする人間とは少し掛け離れてる。
「だから…、どこまで行く気?」
車は神戸方面に向かう高速道路を走る。
「神戸…。」
それはわかっとる!
アホの返事にキレたくなる。
去年のような惨めな自分が居ない。
だけど今年は不安な自分が居る。
ドレスにネイルをして自分じゃない自分に戸惑う。
ガテン系のまま焼き鳥屋で焼き鳥を頬張る私が私だと思うから、今の自分に落ち着かない。
気付けば悠真が運転する車は神戸の高級ホテルへと滑り込む。
「ここ?」
「ミシュランの五つ星。」
「マジか!?」
「だから正装が必要なんや。」
悠真がまたクスクスと笑う。
クリスマスイブにそんな場所を予約するとか大変だったに違いない。
爪にコンクリートが付着した女が来てよいお店じゃない事は確かだ。
「なんで、わざわざ高級ホテル?」
「1回やってみたかったから?」
それだけかい!?
最上階にある展望レストラン。
イブの夜はカップル限定らしい。
窓の外は100万ドルの夜景。
「シャンパンくらいなら飲めるか?」
悠真がそう聞いて来る。
「飲酒運転になるやん。」
「泊まるに決まってるやろ。」
悠真がそう言うて私のグラスにシャンパンを注ぐ。
泊まるつもり…。
イブにわざわざ高級ホテルに泊まる。