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振り向けば…
第29章 激甘なのに…
誰かの手が私の顔に触れる。
「起きたか?」
目を開けると悠真が居る。
「悠真…?」
「ん?」
いつの間にか夜景だった窓の外は普通の景色に変わってる。
「もう…、朝?」
「ああ…。」
「悠真…。」
「ん?」
「キスして…。」
「ダメ…。」
「なんで?」
「その気になったら、このままホテルから出れなくなるからな。」
悠真が私を突き放す。
恋人の時間は終わり。
いつものように家族の時間。
「シャワーを浴びて着替えて来い。」
悠真が私に大きな紙袋を渡して来る。
中身は普通の下着と普通の着替え…。
いつの間に用意したの?
そう思う。
悠真はもう、夕べのスーツではなく上半身を裸でジーパンを履いてる。
「昨日の服は?」
「もう車に詰んだ。」
「これは?」
「クリスマスプレゼント、今日がほんまのクリスマスやぞ。」
まだ寝ぼけてる私をクスクスと悠真が笑う。
ぼんやりとする頭のまま、ひとまずシャワーを浴びて目を覚ます。
なんで悠真は恋人として認める事を拒否するの?
そればかりを考える。
悠真が用意してくれたのは私好みの普通の下着にセーターとショートパンツ…。
ご丁寧にタイツとショートブーツまで用意してくれてるという至れり尽くせりなのに…。
私はもう悠真の家族に戻ってる。
「腹減ったな。」
ホテルを出て悠真がボヤく。
もう昼前…。
「奢ったるからラーメン食べに行こう。」
私から悠真にそう言うて誘う。
神戸なら駅前のラーメン屋さんがお勧めだと現場の職人さんに教わった。
「来夢の奢りか?」
「クリスマスやからな。」
「あざーすっ。」
いつもと変わらない会話。
少しの安心と寂しさを感じてまう。