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振り向けば…
第29章 激甘なのに…
いつもと変わらない会社…。
いつもと同じ年末…。
現場確認をすれば資材置き場の在庫整理で仕事納めになる。
今年は余裕がある。
だけど1日が長く感じる。
「良いお年を…。」
社員の皆んながそう言うて帰る。
「明日から休み?」
夕ご飯を食べる私にお母さんが聞いて来る。
「うん…。」
「なら、自分の部屋の大掃除をしなさいね。」
明日は私の誕生日なのに…。
「はいはい。」
生返事でお母さんに答える。
言うた以上はやらないといけないという義務感を感じるタイプの私…。
自分の誕生日だというのに朝から窓を吹き網戸を洗いベッドのシーツの交換をして部屋中を掃除する。
来年はこの部屋ともお別れだとか考える。
夏には一時的に引越しをする。
傷だらけの壁紙にそっと触れては様々な思い出に浸ってまう。
悠真…。
振り向けば私のベッドに寝転がってゲームをする悠真がいつも居た部屋。
新しい部屋でもそうなるのだろうか?
今はもっぱら私が悠真の家に行く。
この部屋へ最後に悠真が来たのはいつだろう?
成長と共に変わっていく生活に悠真とは変わらない生活を送りたいと望んでた。
部屋の掃除を済ませてリビングへ行く。
ソファーの指定席にはお父さんがタバコを咥えて座ってる。
随分と老けたな。
そないな事を思う。
頭は相変わらずのスキンヘッド。
だけど目尻のシワやほうれい線が深くなって昔みたいに厳つい感じがなくなってる。
作務衣でも着れば、どこかの修行僧に見えなくもないなと妄想して笑うてまう。
「どないしてん?」
1人で笑う私をお父さんが不思議そうに見る。
「うちのお坊さんは師走やのに暇そうやから。」
そう言うてお父さんの足元という指定席に座る。