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振り向けば…
第29章 激甘なのに…



「たまにはお父さんと出掛けへんか?」


悠真の話を聞いて泣きそうになる私の頭を撫でてお父さんが聞いてくれる。


「うん…。」

「難波にでも行こか?」

「お父さんが難波?」

「これでも時々はお母さんとデートすんのに難波に出掛けとるんや。」


いつまでもラブラブな夫婦に笑いたくなる。


「難波には美味い焼肉屋があるから来夢を連れてったる。」

「お母さんがヤキモチ妬くよ。」

「今日は来夢の誕生日やから特別や。」


久しぶりにお父さんの車に乗る。

乗用車だと荒っぽい運転をするお父さん…。


「ええ加減にぼーそーぞくは辞めなあかんで。」

「辞めてから長いわ。」

「嘘つき…。」

「ほんまやて。」


親子で友達で恋人感覚のお父さん。

いつだって私に激甘だからお母さんが目くじらを立てる気持ちが最近はわかる。


「お母さんも一緒に来たら良かったのに…。」


まだ家の大掃除と何かと買い物があるからとお母さんは来なかった。


「あの家での最後の正月やからな。今年の大掃除は丁寧にやりたい言うて先週からずっと掃除しとる。」


お父さんがそんな話をする。

家の建て替えに伴い古い家具などを捨てるから荷物の整理などを大掃除のついでにやってるらしい。


「それにな、今日は来夢が誕生日で久しぶりに家に居るから来夢の好きなもんを作るって張り切っとる。」

「私の?」

「久しぶりやからな。お前、最近はほとんどお母さんの飯をまともに食うてないやろ?」


少し私を叱るようにお父さんが言う。

確かに仕事で遅くなるとコンビニのおにぎりだけで誤魔化したりした挙げ句に週末は悠真の家ばかりに行くのだからお母さんのご飯を食べてない。


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