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振り向けば…
第29章 激甘なのに…
私が残したご飯は翌日のお昼にお母さんが1人で食べてるとか聞くと申し訳ない気分になる。
「ごめんなさい。」
「構へん。もう来夢かて子供やないんやから。けどなたまにはお父さんやお母さんと落ち着いて飯くらい食う時間を作ったってくれや。」
「うん…。」
悠真が東京に行けば、きっとそんな時間はいくらでも取れるとか考える。
悠真が東京に…。
耐えられない自分に身体が震えてまう。
「寒かったか?」
お父さんが車内の暖房を上げてくれる。
「大丈夫…。」
悠真の事は考えたくない私が居た。
難波でお父さんと焼肉屋でランチをする。
昔からあるお店…。
お父さんとお母さんが若い時からあったという。
お父さんのデートコースの定番の焼肉屋さん。
「しっかり食えよ。」
お父さんが自分の分のお肉まで私の取り皿に放り込むから椀子蕎麦ならぬ椀子焼肉な気分になる。
「そんなに食べれないってば…。」
「来夢は食が細いからな。」
「普通だよ?」
「来人も細いんや。」
「そうなん?」
「成長期に俺とお母さんが居なかったせいやな。」
お父さんが寂しく笑う。
家族で揃って毎日、晩ご飯を食べるのが好きだったお父さん。
ことごとく入院でそれが阻まれた事を後悔する。
「でも、あの頃はおじいちゃんも居てくれたし。」
悠真だって居た。
それでも家族がバラバラに食事をするのが当たり前になってまう。
私は悠真と…。
お母さんはおじいちゃんと来人と…。
酷い時は来人が塾だからと来人が1人だけで食事をする姿を何度か見た。
いつから、うちの家族はそんな風にバラバラになってしまったのだろうとか考える。