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振り向けば…
第30章 神様…
「ありがとうございます。」
職人さんには頭を下げる癖が付いた。
現場では職人さんに拒否されたら仕事が成り立たなくなるからだ。
「息子さんは医者って…、凄いですな。」
「うちの子供らは俺には似なかったらしい。」
「奥さんに似たんやな。」
そんな話が出るとお母さんはやたらと嬉しそうな顔を見せる。
11時を過ぎる頃には来客の人達が徐々に帰ってく。
「来夢…。」
お母さんと後片付けをしてた私に悠真の方から話かけて来る。
「今、忙しい。」
わざと悠真を突き放す。
「初詣に行こうや。」
悠真が私を外に連れ出そうとする。
「ここはええから行っといで。」
お母さんが苦笑いをして私に言う。
悠真と初詣に行くのは毎年の事だから…。
小さな頃は来客の人達からお年玉を貰うから、それを握っては初詣に行ってた。
商店街の近くにある神社に行けば僅かではあるけど屋台が並んでるからだ。
悠真と話をするチャンスはこれが最後なのかな?
そう思う部分もあるから悠真と2人で初詣に出掛ける事にする。
「寒くないか?」
寒がりの私にそう聞いて来る。
「今年のお正月は暖かいみたい。」
普通にそう答える。
東京の話を切り出さなきゃ…。
頭ではそう思うのに重い口が開かない。
「来夢、人が増えて来たから逸れんなよ。」
悠真が軽く私を引き寄せる。
商店街が近くなると確かにチラホラとだけど人が増えつつある。
「あんな、悠真。」
言わなきゃ…。
必死にそればかりを考える。
「来夢、ちょっと待っとけ。」
そう言うて悠真が私から離れてく。