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振り向けば…
第30章 神様…
悠真が向かったのは甘栗を売る屋台…。
毎年、悠真が買うお店。
お店のおじさんと悠真が話をしてる。
毎年毎年買うものだから、悠真の分は少し多めのサービスをしてくれるお店のおじさん。
「ほら、来夢…。あーん…。」
悠真が言う通りに口を開ければ煎りたてでホクホクの甘栗が口の中に放り込まれる。
「美味いか?」
「うん…。」
私の爪はカルシウム不足なのか、昔から甘栗の殻に刺さらないふにゃふにゃの爪。
だから上手く殻を割れない私の為に悠真が殻を剥いてくれる。
子供の頃から煎りたての甘栗を食べるのが初詣の楽しみの1つだった。
来年からは無理なのかな?
いや、おばちゃんは大阪に残るんやからお正月は悠真が帰って来る?
甘栗を食べながら、ぼんやりと考える。
遠くで鐘の音がする。
「除夜の鐘が始まった。」
悠真が私の手を引きながら神社のお参りの列に並ぶ。
ここは神社だから鐘はない。
でも、この神社のすぐ近くにお寺があるから除夜の鐘は毎年ちゃんと聞こえて来る。
神社ではお社の前で鈴を鳴らしてお賽銭を箱に入れて参拝する。
神様…。
悠真に東京に行って欲しくない。
とは願えない。
正社員として安定の就職が出来る事は悠真の為には良い事だから、それを邪魔する願いを神様にお願いなんか出来るはずがない。
だから…。
神様…。
私は一体、何を祈れば良いですか?
間抜けな質問を神様にする。
ため息が出た。
私の後ろに人が並んでる以上は馬鹿な参拝をグズグズと続けてはいられない。
参拝を済ませて神社の出口に向かって歩き出す。
ふと気付けば私は1人で歩いてる。
悠真と逸れた。
それだけはすぐに理解が出来た。