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振り向けば…
第30章 神様…
逸れたからと言うて騒ぐ場所ではない。
もう子供じゃない。
ここは家の近所。
なのに悠真が居なくなるという事実が実感として湧いて来ると泣きたい気分が一気に私に襲って来る。
私は1人になる。
それを受け入れられる強い女にならなあかんのや。
開き直って我が家に向かって歩き出す。
「お前、薄情やの?」
突然、背後から頭を押さえ付けられる。
だから振り返る。
振り向けば…。
当たり前のように悠真が私に笑顔を向ける。
「悠真…。」
泣きたくないのに…。
息が詰まって目頭が熱くなる。
「どうした?」
悠真が心配そうな顔に変わる。
「東京に引っ越すんか?」
無理矢理に息を飲み込みながら悠真に聞きたい言葉を解き放つ。
悠真の顔が一瞬だけ驚いた表情を見せた。
その顔はすぐに穏やかな笑顔に変わる。
「誰から聞いた?」
「お父さん…。」
悠真がクスクスと笑いながら私の手を握って悠真の家の方に向かって歩き出す。
「東京には行けへんで。」
「だけど…。」
「オカンが変な言い方をしただけや。」
悠真が苦笑いをする。
悠真の仕事が不安定だとおばちゃんはいつも心配をしてるらしい。
だから悠真はおばちゃんに
「正社員のオファーはある。だけど、その条件を受けたら東京に引っ越す事になるけど、オカンは一緒に行く覚悟があるんか?」
と聞いたらしい。
それに対しておばちゃんは知らない土地には行きたくないと返事をした。
「だから東京の会社との話し合いで就職ではなく仕事の年間契約をして貰う事が決まったから、ひとまず契約に行ってただけや。」
悠真が私の頭を撫でて笑う。
東京の会社の外注としての固定契約をしたらしい。