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振り向けば…
第31章 仕上げ…
「秋は紅葉?」
「市内にある東福寺の橋から見る紅葉が観光の定番らしい。当然、雲龍図もある。」
「なら観に行こうよ。」
写真は残さない。
だけど思い出はたくさん欲しいと欲張りになる。
京都なら日帰りはいつでも出来る。
お寺の庭園を眺めながら悠真と思い出だけを作る事に専念する。
「この寺は足利尊氏が建てたんや。」
「聞いた事あるな。金閣寺の人か?」
「それは孫の方。尊氏は鎌倉幕府を倒して京都に室町幕府を開いた人物や。」
「ふむふむ…。」
「この辺の歴史はややこしいから、中学校じゃ適当にしか教えへんからな。」
「ややこしいんか?」
「まず鎌倉幕府が気に入らない後醍醐天皇が尊氏を持ち上げて鎌倉幕府を潰すやろ?」
「うんうん…。」
「その後に後醍醐天皇を気に入らない言うて尊氏は違う天皇で室町幕府を起こすけど、後醍醐天皇も奈良で本物の幕府はこっちや言うてまうから歴史的には南北朝戦争へと突入になるんや。」
「へ?」
「なのに、この寺は後醍醐天皇の御霊を祀るとかいう趣向で尊氏が建ててるんやで。」
喧嘩をして最後は親友になったから死んだらお寺を建ててやるとでも言うて出来た寺か?
やはり歴史はちんぷんかんぷんやとか思う。
「悠真…、詳しいな。」
「一休さんで学んだからな。」
「一休さんかい!」
トンチと歴史は紙一重だと初めて知った。
お寺が経営するレストランでは精進料理のコースが食べられるとか聞いたけど、悠真が
「精進料理で俺の腹は収まらん。」
とか言うからお寺を出て少し遅めのランチを食べに行く事にする。
「少し急がんとあかんな。」
ご飯を食べながら悠真が言う。
「急ぐんか?」
まだ2時を過ぎた頃だから急ぐ理由がわからない。