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振り向けば…
第31章 仕上げ…
ご飯を食べ終わりお店を出る。
「嵐山は夕方になると、ほとんどの寺や店が閉まるからな。」
「マジか!?」
「京都で泊まる観光客は皆んな市内のホテルや旅館に泊まるから夕方には市内に向かうからやろ。」
つまり夕方には人が居なくなるからとお店はさっさと閉めてしまうのが嵐山という街だ。
散歩をするように嵯峨野の竹林へと悠真と向かう。
竹林に挟まれた通路を歩き続けると古びた神社が見えて来る。
その神社の奥の本殿までを悠真と進むと悠真がゲラゲラと笑い出す。
「何?」
「この石に願い事をしたら望みが叶うらしいぞ。」
「なぬっ!?」
お亀石という名の少し大きな石。
願いが叶うのならと今は修学旅行の学生や女性の観光客にかなり人気のパワースポット。
そもそもが縁結びの神社で安産祈願の参拝が多い神社だから、願い事はやはり彼氏が欲しいと願う人が多い神社らしい。
願えば一年以内に叶うとか聞くと私も願掛けをしたくなる。
神様…。
切実に普通の彼氏が欲しいです。
真面目に祈る私を悠真が馬鹿にする。
「石に願って叶えば人生は苦労しない。」
涼し気にそう言う悠真に少し腹が立つ。
お前がまともなら石ころに願いを願ったりする必要はないんや。
ふんっ…。
とそっぽを向いて再び悠真と歩き出す。
日が暮れて薄暗くなる竹林。
風が靡くとザワザワとざわめきを聞かせて来る竹林からは何かが出て来そうで怖くなる。
街灯などない竹林に挟まれた小道は女の子が1人で歩くには心細い道に見えて来る。
「ゆう…。」
不安になって振り向けば、悠真が必ず居てくれる。
「どうした?」
サラリと私の肩を抱いて私の身体を引き寄せる。