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振り向けば…
第32章 その弁当が…
「ちょっと待ってて下さい。」
自分の車に乗り込もうとしてた岩谷さんを呼び止めて私は自分の車の後部座席から用意をしてた小さな紙袋を取り出した。
「これ、唯ちゃんにお土産です。」
嵐山で買うた小瓶に入った飴や金平糖の詰め合わせ。
今年はあまり会社にはお土産を用意しないと決めてるから、事務のおばさん達にバレないように岩谷さんにお土産を渡す事になる。
「すみません。唯が喜びます。」
岩谷さんがひたすら私に頭を下げる。
「それじゃぁ。」
そう言うて自分の車に乗ろうとした。
「すみません、あの…、良かったら食事にでも行きませんか?」
岩谷さんが私の車の窓を叩いて誘って来る。
「食事…、ですか?」
「えっと…、車ですし、ファミレス程度ですけど…。なんならお茶だけでもいいです。お土産のお礼に…。いや…、部下が上司を誘うとか失礼ですよね?」
落ち着きなく岩谷さんがアタフタとする。
ゼネコンで染み付いたサラリーマンの習性が岩谷さんに残ってる。
上司がお土産を用意してるのに部下の自分が用意してないのは気まづいと思うてる。
「えーっと…、だから…。その…。」
ひたすら歳下の上司にアタフタする岩谷さん。
少し可愛いと考える。
「食事に行きましょう。」
私から言うてあげる。
「お願いします。」
再び岩谷さんが私に頭を下げていた。
上司として部下を知るチャンスではある。
修斗君は彼の性格からか、こっちが聞かなくともベラベラと話をしてくれるタイプだからわかりやすい。
大人しい岩谷さんは頭を下げるだけの人だから、ゆっくりと話す機会が欲しいと考える。