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振り向けば…
第34章 えへへ…
国内、いや海外でも有名なタイヤメーカーの名前を悠真が言う。
彼は財閥というグループ会社を経営する親族の1人。
「親戚ってレベルらしいけど、道楽で車屋を経営してレースやラリーとかで遊んでる人や。」
悠真が相馬さんの世界は私達とは違い過ぎると私に説明をしてくれる。
なら、悠真は私と同じ世界なの?
聞きたくても聞けない。
悠真が相馬さん側の人間になったから私と付き合うと私が傷付くと悠真は思うてるのだろうか?
その時の私は何にもわかってない鈍い女。
悠真に甘えては自分勝手に傷付いてただけの馬鹿な女だったと思う。
いっぱい悠真を傷付けてたのは私の方だったのかもしれない。
今なら、そう思う。
だけど、この時の私は自分だけが不幸だと思うだけで精一杯の子供のままだった。
その日のお天気はずっとグズついたまま、私の心と同様に晴れる事はなかった。
翌日はゆっくりとした1日を過ごすと私は仕事の為に会社に行き、更にその翌日には悠真がドライブに行こうと言う。
「どこに行くの?」
「五重の塔を見に行く。」
「京都の?」
「いや、奈良の。」
てっきり日本最古の五重の塔で有名な法隆寺の五重の塔だとばかり思うてた。
天気は回復してお天気…。
確かにドライブ日和だと思う。
悠真が運転をする私の車は法隆寺のインターを通り過ぎて行く。
「五重の塔やろ?」
「五重の塔や。」
悠真がクスクスとだけ笑いやがる。
こういう時の悠真が嫌いだ。
完全に子供扱いで私を馬鹿にする弟の来人と同じ男に感じてまう。
膨れっ面でそっぽを向くと悠真が私の頭を撫でる。
「多分こっちの五重の塔の方がお前好みやから、不機嫌になるなよ。」
優しい声。
いつだって私の為。
それを感じるから不機嫌は辞めにする。