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振り向けば…
第34章 えへへ…
とにかく唯ちゃんの為のお弁当を詰め込んでから悠真を連れて岩谷さんと約束をした待ち合わせの駅に向かう。
「おはようございます。」
岩谷さんが緊張した顔をする。
休みの日に上司に呼び出されたのだから、そういう顔になっても仕方がない。
だけど今日の主役はあくまでも唯ちゃんだ。
「おはようございます。」
私は唯ちゃんだけに笑顔を見せる。
「お姉ちゃん、金平糖をありがとう。」
きっと練習をして来たのだと思う。
セリフを張り切って言うように唯ちゃんが私に頭を下げながら言う。
「美味しかった?」
「うん!」
唯ちゃんが満面の笑みを見せると岩谷さんが
「1日1個って決めて大切に食べてるんです。」
と苦笑いをする。
キラキラとした宝石に見えるお菓子を大切に食べたくなる女心がわかる。
「唯ちゃんは偉いね。」
「えへへ…。」
私が褒めると本当に嬉しそうな顔をする唯ちゃんが可愛いとか思っちゃう。
「お姉ちゃんの彼氏?」
私の後ろに寄り添う悠真を唯ちゃんが不思議そうに見る。
「お友達、唯ちゃんと私が仲良くしたら唯ちゃんのパパが寂しくなるからね。」
私の冗談に唯ちゃんが笑う。
「参ったなぁ…。」
頭を掻きながら苦笑いをする岩谷さんは唯ちゃんには逆らえないのだと感じる。
うちのお父さんが私に逆らえなかったのと同じだ。
だからこそ唯ちゃんには私達のような考え方をせずに育って欲しいと願う。
親に上手く甘えられずに自分で何でも出来るようにならなければと考える子になるとやりたい夢とかが無くなってまう子供時代を過ごす事になると私と悠真は嫌という程知ってるから…。
「電車が来たぁ。」
唯ちゃんが嬉しそうに言うて電車に乗る。
「パパ、ここ空いてる。」
真っ先に唯ちゃんが席に座り岩谷さんが並んで座るけど悠真と私は座らない。