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振り向けば…
第34章 えへへ…
「お姉ちゃんは座らないの?」
「うん…。」
「お兄ちゃんも?」
「うん…。」
「なんで?お席いっぱい空いてるよ?」
まだ4歳の唯ちゃんには人に席を譲るとかがわからない。
私と悠真を見て慌てて岩谷さんも立とうとする。
「岩谷さんは唯ちゃんの為に座ってて下さい。」
そう言うて岩谷さんを座らせる。
「お兄ちゃん?」
「ん?」
「お姉ちゃんの為に座ろうよ。」
今度は唯ちゃんが私の為に悠真に座れと言い出した。
「お兄ちゃんは座っちゃいけないんだよ。」
「なんで?」
「本当はお姉ちゃんは座ってもいいんだ。お姉ちゃんは困ってる人の為にすぐに立てる人だから。だけどお兄ちゃんは座っちゃうと立てなくなるから最初から座らないだけなんだ。」
悠真がそんな話を唯ちゃんにする。
悠真だって困ってる人の為に立てるはずなのに?
何故、始めから座ってはいけないって考え方をしてるのだろう?
悠真の話を唯ちゃんが不思議そうに聞いてる。
私も不思議そうに悠真を見てまう。
ずっと傍に居た悠真なのに…。
私は悠真の事を何もわかってない気がする。
目的の駅まで唯ちゃんがひたすら悠真を不思議そうに眺めるだけだった。
動物園に入ると
「パパ!パンダ!コアラも!」
はしゃぐ唯ちゃんが岩谷さんに見たいものをお強請りする。
「唯、走っちゃダメだよ。」
岩谷さんが駆け出す唯ちゃんを追いかける。
私はそれを見てクスクスと笑う。
小さな頃、私が駆け出すと必ずお父さんが追いかけてくれた。
お父さんが入院をしてからは何故か悠真が私を追いかけてくれるようになってた。