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振り向けば…
第4章 笑ろたれや…
お母さんがまたお父さんに言いつけたんや。
病院から必死になって私の携帯を鳴らすお父さんの着信をぼんやりと見ながらそう思う。
着信だけ見てスルーする。
しつこいくらいに着信が鳴り続ける。
お母さん、お父さんが交互に掛けて来る感じ。
放っといて…。
今は1人にして欲しかった。
携帯の着信を見ながら泣き続けた。
着信の合間にメールが来た。
メールは悠真…。
『どこや?』
『緑地…。』
たったそれだけの会話。
10分後に何故か悠真が私の前に現れる。
傘を畳んでガゼボに入って来ると私が居たベンチの隣りに座る。
「心配したやんけ…。」
私の身体に悠真が自分の着てた上着を掛けて頭を撫でるようにして肩を抱いてくれる。
「お父さんが…。」
「聞いた。明日、一緒に行ったるからオッチャンに笑ってやれや。」
「笑える訳がないやん。」
「それでも笑ろうてやれや。今はオッチャンが一番不安やねん。オッチャンが一番好きで可愛いのは来夢だけやろ?その来夢にこんな風に拒否されたらマジでオッチャン死んでまうぞ。」
「嫌や…、お父さんが死んだら嫌やぁ…。」
「ようわかっとる。お前が世界一オッチャンが好きなんは知っとる。」
ファザコン…。
そう言われるくらいお父さんが好きな私を悠真が抱きしめてくれる。
「俺が病院に連れてったるから、オッチャンに心配を掛けんなや。」
悠真の腕の中でわんわんと泣いた。
あの日、龍平おじさんの為にお父さんが私の小さな胸で泣いたように私は悠真の広い胸で泣き続けた。
少し落ち着いてから悠真が私の手を握って家に連れて帰る。
おじいちゃんが玄関で私を待ってた。