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振り向けば…
第35章 嘘でも…
龍平おじさんの息子である悠真には複雑な気分になる話だから、悠真の機嫌はずっと悪い。
夕方前には引越しが終わる。
「オカンが飯を作ったから一緒に食おう言うてる。」
夕食は悠真の家で久しぶりにおばちゃんのご飯を食べる事になる。
「なぁ…、やっぱり来夢ちゃんが悠真と住んだら?」
おばちゃんまでがそんな事を言う。
「私は悠真とは暮らしません。」
私だけがため息で答える。
「悠真、あんた…、来夢ちゃんにまで見捨てられたらどないするつもりやねん。」
「別に…、俺…、見捨てられてないし…。」
情けない顔でブツブツと悠真が言い訳をする。
「やかましいわ!いきがって贅沢なマンションを買うても未だにちゃんとした恋人すら作れてないダメ男が偉そうにすんな。」
「作ってないだけやんけ!」
「世間じゃ、お前みたいに不安定な男にニーズがないって事や。」
「オカンには安定の不動産屋が居るやろ!?」
「それとこれとは別の話や。馬鹿息子!」
相変わらずの派手な親子喧嘩…。
明け透けにものを言うおばちゃんに悠真は似たのだと思う。
「来夢からも、オカンに言うたってくれ。」
悠真が私に助けを求める。
私はクスクスと笑うだけ…。
羨ましいほどに仲の良い親子。
「来夢ちゃんも、大ちゃんが会社でいじけてたで…。」
おばちゃんが微妙な顔で私を見る。
今回の私の一人暮らしを納得してない人がもう1人居る事を言うて来る。
大ちゃん…、それはうちのお父さん…。
「その話はなんべんもしたのに?」
「大ちゃんも来夢ちゃんが居らんと生きてかれへん人やからなぁ…。」
今度はおばちゃんがクスクスと笑う。