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振り向けば…
第35章 嘘でも…
一戸建ての多い住宅街であるうちの近所ではファミリータイプの賃貸マンションが見つからずに、お父さん達は一駅向こうの街に居る。
あくまでも、こちら側には悠真と悠真のお母さんが居るのだから大丈夫だとお父さんを説得しての一人暮らしだというのに、悠真まで不機嫌だから私は呆れるしかない。
「親はさ…、幾つになっても子供が心配なんよ。」
おばちゃんが寂しい笑顔でそう言う。
元々がお父さんや龍平おじさんよりも遥かに若かったおばちゃんは龍平おじさんを真似するように高校を辞めて10代で悠真を産んだから親にはそのまま勘当されたらしい。
勘当をされても、おばちゃんの両親は時々はおばちゃんに連絡をして来て悠真の入学祝いなどはしてくれたのだとおばちゃんが言う。
「だから、悠真も来夢ちゃんも私らみたいにならんでホッとはしとるよ。」
若さと勢いだけで暴走した人生をおばちゃんもお父さんも送って来た。
悠真はともかく私は何故か慎重に石橋を叩いて渡るタイプの人生を送ってる。
そんな私の初めての冒険である一人暮らしに誰もが過保護になりピリピリとしてる。
ご飯の後は当然、悠真が私を送る。
「来夢…。」
「んー?」
「鍵を出せ。」
「何の?」
「お前ん家に決まっとるやろ!」
ため息が出る。
だがしかし、これ以上は悠真を不機嫌にする訳にもいかないと思うから渋々とスペアキーを渡してやる。
「なんかあったら…。」
「必ず悠真に電話します…。」
「わかっとるならええねん。」
やっと満足気な顔をして悠真が帰ってくれる。
こりゃ、一人暮らしと言えるのか?
いつまでも過保護な悠真に呆れてまう私の初めての一人暮らしだった。