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振り向けば…
第35章 嘘でも…
結局、お盆休みは悠真がやたらと私にベッタリだから一人暮らしの気分は全く味わえない。
「来夢…、飯に行くぞ。」
「おばちゃんは?」
「例の社長様と旅行や。」
不機嫌な悠真だから私は悠真とご飯を食べる。
例の社長様に張り合うように悠真がやたらと豪華な食事にばかり連れて行く。
「外食…、飽きへん?」
「どうせオカンが帰って来たらひたすらオカン飯やからな。」
オカン飯…。
実はおばちゃんはあまり料理が得意じゃない。
冷蔵庫の残り物は全て味噌汁にしてしまえがおばちゃんの必殺技。
キャベツとジャガイモまでは許せてもイカやタコは許せないと悠真が言う。
つまりオカン飯とはあかん飯という意味。
「おばちゃんは相変わらずやな。」
私だけがゲラゲラと笑い悠真はブスッとぶー垂れる。
「笑い事ちゃうわ。そんなオカン飯を社長さんは喜んで食うらしいぞ。」
「そうなん?」
「オカンと同じで早くに嫁を亡くしたらしい。しかもその奥さんとの間には子供が居らんかったから、そのまま一人暮らしが長かったんだと。オカン飯でも自分で作って食うよりは旨いとか言うてくれるてオカンが言うとった。」
悠真が少しだけ寂しそうに笑う。
悠真が居たからおばちゃんは苦労したんだと悠真は思うてる。
悠真が居なければ、もっと早くに再婚しておばちゃんが幸せになれたかもと考える悠真も私と同じように焦って生きて来たと感じる。
「今、おばちゃんが幸せならええやん。」
「まぁな…。」
そんな会話をするお盆休みはすぐに終わる。
やっと本当の一人暮らしが満喫出来ると思うたんは僅か3日ばかしの事だった。