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振り向けば…
第35章 嘘でも…
お陰で隣の家や上の部屋のトイレの音や会話は丸聞こえだと考える。
このマンション…。
確か一人暮らししか居ないマンションだと不動産屋が言ってたよね?
なのに翌日の土曜日の夜も…。
『あっはぁーん…。』
が始まった。
しかも、その声は深夜の3時まで続くという。
勘弁してよー!
叫んでも仕方がない。
ただただ毎週のように週末に続く怪しげな声…。
かなり寝不足の私だから日曜日は朝寝坊をする癖が付いてまう。
「まだ寝とんのか?」
悠真が呆れた顔で私の部屋に上がり込む。
「仕事で疲れてるんです。」
「ふーん…。」
疑うように悠真が私を見る。
「悠真…。」
「なんや?」
「今度の土曜日の夜にちょっと来てくれる?」
「なんかあるんか?」
「冷凍庫に貯まったご飯を片付けて欲しいの。」
そんな言い訳をして悠真を土曜日の夜に呼び出した。
悠真が居る時にも、あの声を確認出来るようなら不動産屋に文句を言わなければとか考える。
このマンションを紹介した不動産屋はおじいちゃんのアパートの紹介もしてた不動産屋さんだから長い付き合いの不動産屋さんである。
今は私が家主である事もわかってるのだから、このマンションはあんまりだと文句を言いたくなる。
おじいちゃんのアパートはちゃんと仕切りに土壁を入れて音が漏れないようにしてたぞ。
今回、改装するアパートはしっかりとコンクリート壁に変えるから更に音は響かない設計にしてるぞ。
建築屋の端くれとしては中身が空っぽのボードだけという仕切りに納得がいかない。
かと言うて、この辺りには他にマンションがなかった為にその部分を確認しなかったのは私の責任でもあるとは思う。