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振り向けば…
第35章 嘘でも…
「嘘やん!?」
「マジ。」
「なんでわかるんよ?」
「これ、AVの声やぞ。つまりテレビのボリュームがデカいて事や。」
「へ?」
「さっきの女の声と今の女の声が別の声になっとる。独り者の男が週末にシコシコしとるんやな。」
「マジか!?」
「来夢の声も聞かせたれや。抜くのが早けりゃ深夜までにはならんやろ?」
ふざけて悠真が私の胸を触って来る。
「辞めろ!お馬鹿!」
「来夢さん…、寝不足で機嫌悪い。」
「そういう問題じゃない!」
「なら、嘘でも俺が付き合いたい言うたらやらせてくれるんか?」
悠真の言葉に固まった。
嘘でも…。
悠真にとって私と付き合ういう事は嘘になるんや…。
ちょっと胸が痛いなとか思う。
別に悠真が嫌ならどうしても付き合いたいとか思ってる訳じゃない。
私の家族でさえ居てくれれば構わへんとは思うてる。
悠真には甘やかされ過ぎて私の感覚がおかしくなってるとか考える。
「冗談や。今日は泊まったる。明日、俺が不動産屋の社長に電話したるから…。」
悠真が私の頭を撫でて、そない言う。
うちの管理人として悠真も不動産屋の社長さんとは顔馴染み…。
「私のベッドしかないもん。」
「一緒に寝たらええやんけ?」
「狭いで…。」
「慣れとる。」
「先にお風呂しておいでや。」
「次から俺の着替えを置いといてくれ。」
そう言うて悠真が私の家のお風呂に入る。
いつも、いつも、いつも…。
私と付き合う気はないと突き放す。
なのに私とはやりたいとか言いやがる。
最後はいつも私を甘やかして終わる。
だから悠真に頼る癖が付いた。
離れなきゃ…。
いつかは悠真と離れなければ…。
寂しくて泣きそうになる自分を堪えるだけで精一杯の夜だった。