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振り向けば…
第36章 ええ男やのに…
つまらない男の意地っ張りは2人共、全然治ってないやん。
「たかがファミレスの支払いにグダグダするなら私が払う。」
2人から支払い用の伝票を取り上げた。
結局は優しい拓也さんが折れて悠真が支払いをする事になる。
「俺は用事があるんで、拓也さんが来夢を送って貰えますか?」
ファミレスを出ると悠真がそないな事を言う。
「うん…、そのつもりです。」
拓也さんは穏やかな笑顔を私に見せる。
「悠真…?」
「大丈夫や。拓也さんも居るし、早う帰れ。」
悠真が私に背を向ける。
こういう時の悠真は振り返る事はない。
「行きましょう。」
拓也さんが私を連れて私を家まで送ってくれる。
拓也さんと2人きりになると汚れた作業服の自分に後悔したくなって来る。
「立派な監督さんですね。」
拓也さんがクスクスと笑う。
「戦闘服ですから…。」
開き直るしかない。
「カッコいいです。」
「カッコいい?」
「うん…、働く女性って感じで、来夢がとても強く見えます。」
弱いよ…。
ずっと悠真に甘えてばかりで、今だって拓也さんに助けを求めてる。
「悠真君が居て良かったと思います。」
「悠真が?」
「今の来夢が危険な事にならないのは彼のお陰です。だから今なら悠真君に感謝します。」
そんな会話をしながら私のマンションの部屋の前まで拓也さんが送ってくれる。
「あの…、上がってコーヒーでも…。」
「それは出来ません。コーヒーは飲みたいけど、それをしたら僕はまた来夢に期待します。今は来夢は依頼人です。だから割り切らせて下さい。」
そう言うて拓也さんが帰って行く。