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振り向けば…
第36章 ええ男やのに…
「姉ちゃん…、まずは俺らに連絡する事があるんちゃうんか?」
来人がやたらと大人びて私を窘めるような言い方をして来る。
「連絡って?」
「父さんが自分の荷物をまとめて姉ちゃんの家で暮らすとか言うてるぞ。今は母さんが父さんに落ち着け言うて宥めてる最中や。」
しまった…。
そう思う。
ストーカー騒ぎを悠真が悠真のお母さんに話せば、それは当然、お父さんの耳に入る事になる。
「だから来人が来たんか?」
「我が家で一番冷静なんは俺だけやからな。」
クソ生意気な奴…。
「とにかく悠真も居るし大学の時の先輩に弁護士さんが居って、その人にも相談してるから大丈夫やってお父さんに言うといてや。」
「なら、姉ちゃんはうちに帰って来るつもりはないんやな?」
「家が完成したら帰るよ。」
「そんな事はわかっとる。」
来人が嫌味ったらしく、ため息をついて来る。
弟にまで子供扱いをされてる。
「なぁ、姉ちゃん…、なんで無理してまで一人暮らしを選んでん?」
「無理なんかして無いわ。私かてもう社会人やで?自分で家賃を払ったりちゃんと出来るかを試せるチャンスやから一人暮らしを選んでん。」
「悠真がずっと一人暮らしやからか?」
まさかの来人の言葉に戸惑うた。
「悠真は関係ないし…。」
「けど、この街に残りたかったんは悠真が居るからなんやろ?」
「そんなんちゃうわ。大体、悠真が居らんと私の一人暮らしなんか認めてくれへんやん。」
誰もが私を子供扱い…。
悠真が居なければ私の存在は認めて貰えない。
「姉ちゃん…、悠真みたいになりたいとか思うて焦って生きるなよ。」
来人の言いたい事がわからない。