この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第37章 怖いよ…
悠真がゆっくりと私の頭を自分の膝に乗せて話をしてくれる。
悠真自身も始めの頃の事は覚えてない。
龍平おじさんが突然帰って来なくなった。
いつからか悠真は夜中に目が覚めるようになる。
もしかしたら龍平おじさんが帰って来るかもと期待をして眠れずにアパートの玄関を眺め続けたと悠真が言う。
「そのうち、そんな俺をオカンが気付いて叱るようになったんや。」
仕事で疲れてたおばちゃん。
とにかく悠真に寝ろと言い聞かせる。
その頃にはまだ悠真にも感情らしいものがあったかもしれないと悠真が寂しい顔をする。
「ただオカンに心配をかけたくなかったんや。」
悠真が呟くように言う。
それからも悠真は眠れない日が続く。
仕事が上手くいかないおばちゃんがある日、そんな悠真の異変に気が付いた。
今度はおばちゃんが自分を責める日が出たらしい。
「オカンが泣きながら俺に謝るねん。だけど俺は泣くオカンに何にも感じなくなってたわ。」
僅か6歳の子の不眠症は一気に悠真の感情を奪ったのだと思う。
ついに悠真親子に限界が来る。
まずは経済的に生活が出来ない。
しかも悠真の様子がおかしいから悠真を病院に行かせたくとも、その病院の費用すら作れない。
たまたま奈良へ仕事に行った私のお父さんが悠真の暮らしてたアパートに顔を出したのがきっかけだった。
「オトンが帰って来たって思うた。」
悠真が私の頭を撫でる。
すぐに悠真は病院に連れて行かれた。
心身性の不眠症だろうと最初の診察で言われた。
悠真の中で龍平おじさんが亡くなった事が受け入れられてない事や、悠真の不安が原因だと言われたから大阪に引っ越す事になった。