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振り向けば…
第37章 怖いよ…
「新しいアパートで暮らせばオトンがもう帰って来ない現実を俺が受け入れる可能性があるって医者が言うたんや。」
そして私と出会った。
悠真にはお父さんが帰って来ないとイジケてる私が許せないと思ったらしい。
悠真のお父さんは帰って来ないのだからお母さんにこれ以上の心配をかけたくないと、ますます感情を封印してしまう悠真。
お父さんが帰って来ないからと自分の感情を剥き出しにしてお母さんを困らせてた私。
そんな正反対な2人の出会いだったと悠真が懐かしそうに話す。
「あの日の夜、俺は久しぶりに寝れたんや。」
悠真が嬉しそうな顔をした。
「あん時は…、お風呂で逆上せたんやろ?」
「いや、お前となら何故かいつもよりも1時間は多く寝れるんや。」
悠真の説明に驚いた。
「あの頃は飯も…、俺はいい加減やってん。」
私は大食漢の悠真しか知らない。
「お前となら争って食うから、いつもよりも食えたし、お前となら何も考えんで寝れるから、それなりに寝れる時間が増えたんや。」
私と居る時は龍平おじさんの事を忘れられる悠真が居たのだった。
私となら少しでも普通に泣いたり笑ったりが出来る悠真になれる瞬間があった。
それを知ったうちのお父さんが家族旅行とかに悠真を連れて来て私と一緒に居るようにと悠真に言うてたらしい。
私の為に悠真が居たのじゃなかった。
悠真の為に私が居たのだった。
「誰もが俺に同情する顔しかせえへんねん。」
龍平おじさんの仕事仲間。
うちのお父さんやお母さん。
おじいちゃん…。
悠真の事情の説明を聞いてる学校の先生。
悠真のお母さんですら悠真に同情する顔をする。
だから他人の顔の表情が能面みたいにしか見えなくなったと悠真が言う。